「あんた、あかんたれやなぁ」
幼いころ、派手にこけてできた膝のすり傷にマキロンをかけられようとするとき
しみる痛さを先取りして、かけられる前から「いたい~~」と泣いては、よく母にこう言われたものです。
「あかんたれ」
大阪で生まれ育った人なら、幼いころ、一度は身近な大人に言われたことがあるのではないでしょうか。
この記事では、大阪弁「あかんたれ」の意味と、似た言葉についてなど解説してみたいと思います。
大阪弁「あかんたれ」の意味とは「ダメな奴」
「あかんたれ」とは人をののしるときに使う言葉です。
現在では、昔に比べるとあまり聞かれなくなりましたが、ある程度大人の大阪人たちは幼いころに一度は言われたことがある言葉なのではないでしょうか。
大阪弁「あかんたれ」の意味と成り立ち
大阪弁の「あかんたれ」とは、「ダメな奴」や「弱虫」という意味で使われます。
だめという意味の大阪弁「あかん」に人をののしるときにつける接尾語「たれ」がくっついてできた言葉です。
他に接尾語「たれ」を使用した言葉には、「貧乏たれ(びんぼったれ)」「しみったれ」「小便たれ」「あほたれ」などがあります。
けんか腰で話すときに使われる「あほんだら」の「だら」も同じような接尾語です。
「あかんたれ」は人を非難する言葉ではありますが、幼い子どもに使うことも多く、どちらかというと愛情を持って見ている相手に対して使う言葉であるように個人的には思います。
「あかんたれ」の使用地域
「あかんたれ」を使う地域としては、大阪の他に兵庫、和歌山、岡山などが挙げられます。
大阪府だけでなく、周辺地域で比較的広く使われる言葉といえますね。
「あかんたれ」を使う人
「日本のことばシリーズ 27 大阪府のことば」(出版年:平成9年)によると、「あかんたれ」は男女ともに使うことばです。
年齢が高い世代ほどよく使うことばで、逆に世代が若くなるにつれ、だんだん使用頻度は下がっています。
大阪在住の私の実感としても、若い人の口からはあまり聞くことのない言葉という印象です。
ただ、ある程度以上の年齢層では、自分は使うことはなくても、私のように幼いころに親や祖父母から言われた経験があるので、意味はわかるという人が多いのではないでしょうか。
大阪弁「あかんたれ」と似た意味の言葉「弱みそ」
「あかんたれ」と同じく、「弱虫」という意味の大阪弁には、他に「弱みそ」という言葉もあります。
「弱みそ」の「みそ」は「味噌」で、こちらも人を嘲る接尾語です。
「弱みそ」の他に、「泣き虫」の意味の「泣きみそ」などがあります。
また、最近の若い人たちの間では、「ヘタレ」ということも多いです。
大阪弁「あかんたれ」はドラマで広まった言葉
「あかんたれ」という言葉は、1976~77年にかけて、フジテレビ系列で放送されたドラマ「あかんたれ」によって全国的に広まりました。
このドラマは、フジテレビ系の昼帯ドラマでは、歴代最高視聴率を記録したドラマで、現在でも各地で再放送されているようです。
ドラマ「あかんたれ」のあらすじ
時代は明治中期。大阪・船場の呉服問屋「成田屋」を舞台に、先代主人とその許嫁の間に生まれた秀松は、わがままで意気地なしの「あかんたれ」。
先代の死を境に、秀松は母によって成田屋に丁稚として預けられます。
成田屋の人間からは「てかけ(妾)の子」などと言っていじめられると同時に、理解者にも恵まれた秀松は、成長して父親譲りの商才を発揮していきます。
しかし成田屋は経営不振や身内によるトラブルなどによって、倒産寸前。
そんな成田屋を、秀松が男性用下着ステテコの開発などによって救っていくことになるのです。
ドラマ「あかんたれ」の原作
「あかんたれ」の原作は花登筐(はなと こばこ)の小説「あかんたれ、土性っ骨」(文芸春秋)。
原作者の花登氏がドラマの脚本も担当され、さらに主題歌「あかんたれ」(鶴岡雅義と東京ロマンチカ)の作詞もされました。
花登氏は、昭和30年代の上方喜劇ブームの立役者であり、超売れっ子脚本家でもありました。
柔らかい響きが大阪弁らしい「あかんたれ」。
人をののしる言葉といえど、どうしても愛情に満ちた優しい響きが残るように感じられますね。
みなさまもぜひ、かわいい弱虫に「あかんたれやなぁ」と言ってみてください。
ちなみに大阪弁「あかん」については、下記の記事でさまざまな意味をストーリーとともに紹介しています。
こちらもぜひご参照ください。
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